粟田口(あわたぐち)

分  類:大名狂言 大名物

登場人物:大名(シテ)、太郎冠者、水破


 あらすじ

 世間では粟田口比べが大流行。そこで大名は、太郎冠者に都まで粟田口を求めに行かせます。 粟田口とは刀の事。ところが、粟田口がどのようなものか知らない太郎冠者は、 水破にだまされ、水破を粟田口と思い込んでしまいます。
 家に帰ると、大名は、粟田口のことを書いた巻き物を取り出し、書いてある事と水破を比べてみます。 「刃は強いか」と聞くと「岩石をかみ砕くほど歯は強い」と答えたり、 「実は古いか」と聞かれると「今まで風呂に入った事がないので古い」と答えたり、 「銘はあるか」と聞くと「姪が二人いる」と、ものの見事に答えるので、すっかり信用してしまいます。 さらに、粟田口に住んでいる人はみな粟田口と呼ばれ、自分の本名は藤間之丞であることを明かします。 早速、大名は粟田口くらべに行きますが、新しい物好きのこの大名。道すがら粟田口の名前を呼びながら 歩いていきます。
 「粟田口」「お前に」 「藤間之丞」「これに候」と、 打てば響く応答に楽しくなった大名は、 太刀を粟田口に持たせ、心も体も軽くして粟田口を呼びます。 ところが、粟田口は答えません。ここが潮時と見た水破は、太刀をもってさっさと 逃げてしまったのでした。そうとは知らない大名はそこらじゅうを探しますが、 水破にだまされた事に気づき、悲しく帰っていきます。

 みどころ

 前半部分は末広がりなどと同じ、いわゆる「取り違え物」。この狂言の特徴は水破を屋敷へ つれてきてからです。山伏をでんでん虫に間違う「蝸牛」は、主人がでんでん虫を知っていましたが、 粟田口では、主従ともども騙されます。その意味では、ナンセンス狂言と言っていいでしょう。
 せっかく、粟田口の重要ポイントを巻き物に書いてもらっているのに、仮名で書いてあったために、 「刃」「歯」「銘」「姪」 の区別がつかなかったとは、細かい設定ですね。
 この奇妙な会話もさることながら、ただひたすら「粟田口」「お前に」と呼び合う終局部は ナンセンスの極みでしょう。おまけに、水破がいなくなってから、大名は「粟田口は鞘走らぬか」 と尋ねまわっています。「鞘走る」とは、刀が鞘からぬけてしまう事。そんなこと知ってるなら はじめから気づいて欲しいですね。

 

 うんちく

 粟田口とは、京都の粟田口というところで作られる刀の総称。どれくらいの歴史があるかは わかりません。ここには、能「小鍛冶」に登場する三条小鍛冶宗近という刀鍛冶の名人が住んでいました。 おそらく、一族でこのあたりに住み、名刀をつくっていったのでしょう。
 粟田口は平安神宮の近くです。現在では宗近の屋敷跡の碑や、能「小鍛冶」で相槌を勤めた狐をまつった 相槌神社などがあります。粟田口とは刀のことであるということを知らないと、意味不明な狂言となってしまいます。

文:佐渡のきつね

 

公演情報

 


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