別表記:菊の花(きくのはな 和泉流)
分 類:大名狂言 準大名物
登場人物:太郎冠者(シテ)、主人
あらすじ
どこかへ無断で旅行にいってしまった太郎冠者が戻ってきたと言うので、
さっそく主人は様子を見に行きます。案の定、太郎冠者は戻っており、
きつく叱りますが、京都見物をしてきたというので許し、
京都の様子を聞きます。
太郎冠者は北野や祇園を見物している途中で菊の花を見つけ、
頭に挿していると、上臈が「都には所はありや菊の花 茫々頭に咲きぞ乱るる」
と詠みかけますが、「都にぞ所はありや菊の花 茫々頭に咲きぞ乱るる」
と詠み返します。
上臈は太郎冠者に付いて来いといい、太郎冠者がひょこひょこ付いていくと、
松原あたりで幕を張ったところへ入ってゆきました。
太郎冠者が幕の中に入って通された所には履き物がいっぱい置いてあり、
上座へ通されたと思って待っていますが、ご馳走は目の前を
通り過ぎてばかりです。
怒った太郎冠者は帰りますが、部下のものが「返せ、返せ」
と追いかけてきて、捕まえられます。「ご馳走もくれないのに、
あそこへ返っても何もないだろ」と言うと、
部下は太郎冠者の懐から上等な下駄を取り戻しますが、
その話を聞いた主人は腹を立てて太郎冠者を叱ります。
みどころ
主人の機嫌をなおそうと思い、面白おかしく話をしますが、
結局、主人の機嫌を損ねてしまうという悲しいお話です。
太郎冠者の行った松原というのはアブナイところです。
今でも客引きのお姉ちゃんがいっぱいいます。
それだけじゃなくて、○○組とかもあったりします。
そのあたりの話は京都狂言散歩で解説しますが、
太郎冠者が付いていった上臈はきっとべっぴんさんだったことでしょう。
その辺りの下心は観客には分かり難いかもしれません。
茂山千作師は茫々頭がお気に入りだそうです。
この太郎冠者はなかなか気の利いた人物らしく、 道端に咲いている菊の花を頭に挿したり、 詠みかけられた歌を小野小町のように 一文字だけ変えて返歌をしたりと、 心有る人物です。 一文字だけ変えての返歌は 能「鸚鵡小町」を受けての演出と思います。 そのような優美な雰囲気が、 緒太の金剛下駄を取ったというつまらなさに 一転する所におかしみがあるのですが、 残念ながら現代の観客にとっては、何がおきたか分からないままに 終わってしまうようです。
文:佐渡のきつね
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