千 鳥(ちどり)


♪「浜千鳥の、友呼ぶ声は〜」
♪「ちりちりや、ちりちり〜」 

 

分  類:小名狂言 太郎冠者物

登場人物:太郎冠者(シテ)、主、酒屋


 あらすじ

 太郎冠者は主に酒を求めて来いと命じられて酒屋へ行くが、酒代がたまっているため売ってもらえない。今回分の代金は持ってきたなどと言い、すきを見て樽を持って行こうとするが、止められる。太郎冠者は津島祭を見物に行った話を始め、樽を千鳥に見立てて子供が千鳥を伏せる様子や、山鉾を引く様子、祭後の流鏑馬(やぶさめ)神事の様子などを、仕方を交えて話し、相手がそれにつりこまれているすきに樽を持って逃げる。


「馬場退け、馬場退け」
「お馬が参る、お馬が参る」
フワリと竹馬、太郎冠者。

 みどころ

 その秀逸なネーミングといい、太郎冠者の言葉にころころと喜んだり怒ったりする酒屋の亭主といい、その酒屋を乗らせつつ、虎視眈々と酒樽を狙う太郎冠者といい、人気曲の五指には必ず入るであろう、狂言の名作です。
 又、KGKKの中でも、演じたい曲目の一つに挙げられております。♪「ちりちりや、ちりちり〜」という、謡『宇治の晒』の一節を謡いながらの舞は、大変しんどい事ではありますが。けれど、このなんとか酒を手に入れようとして、祭の様子を仕方を交えて演じる所が、面白いんですよね。とにかく、この狂言に関しては言うことなし!太郎冠者と亭主の愉快な交流をとくとお楽しみくださいませ。
 ・・・これだけでは申し訳ないので、一つ問題をなげかけましょう。

 :太郎冠者が「『尾張の津島祭』を見物に参った」ということで、あれこれお話を進めて行きますが、本当に太郎冠者は津島祭に出かけたのでしょうか?

 考察:現在の愛知県津島市の津島祭は、川祭で季節も夏のもの。一方、千鳥は冬の鳥。旅先で両立はしない筈・・・。そういえば、太郎冠者は、『栗焼』『柑子』『痿痢』『空腕』において、“作り話”が大の得意と来た。
 それなら、やはり太郎冠者は旅には実際には行ってない?しかし、狂言『千鳥』の歴史を紐解くと、まず室町時代の『千鳥』は、天正狂言本によれば、太郎冠者が須磨明石で千鳥を呼ぶ話をして酒を持ち逃げすることになっていた。現在では、津島祭に関する部分が主要な見せ場になっているが、これは和泉流初代の山脇和泉元宣が尾張藩に召し抱えられてから、後に増補された事らしい。
 狂言は、一方で中世の歴史、風俗の香(現実)を残していたりしますが、一方で“作り話”(虚構)なんですよね。狂言台本を歴史資料として用いることは、何が現実で、何が虚構かを判断しないとで、大変なんだろうな。

・・・さあ、訳が分からなくなってきました所で、時間が参りました。後は、皆さんでご検討をお願いします。さよなら、さよなら。

 公演情報

 '98 4/29(水・祝) 三大学狂言会(春の会)
          於 京都・八坂神社能舞台

 


「狂言演目紹介」冒頭ページに戻る

トップページに戻る