鈍太郎(どんたろう)

 

分  類:聟女狂言 夫婦物

登場人物:鈍太郎(シテ)、下京の女、上京の女


 あらすじ

 都に住む鈍太郎という男は、訴訟のことがあって三年ほど西国へ下っていましたが、無事訴訟も済み、久々に都へ戻って来ました。まず下京の本妻のもとを訪ね案内を乞いますが、本妻は、まことの鈍太郎ではあるまい、近所の若い衆のいたずらだろうと言って、家の中へ入れてくれません。さらに、二年間便りもなかったので、今ては棒使いを夫にしたと 言って、鈍太郎を追い払います。怒った鈍太郎は本妻に暇を遣わし、上京に住む愛人のもとにむかいます。鈍太郎が案内を乞うと、愛人もまた本妻と同じく、本物の鈍太郎が来たと信じてくれません。その上、今では長刀使いを夫に持ったと言って、やはり鈍太郎を追い返します。本妻にも愛人にも見放された鈍太郎はすっかり落胆し、これを出家の機縁に しようと思い立ち、鬢を切って諸国修業に出てしまいます。
 一方、下京の本妻は、最前の男が本物の鈍太郎であったことに気付き、上京の愛人のもとへ行きます。二人は相談して、心を合わせて修業に出る鈍太郎を引き留めることにし、上下の街道で鈍太郎が通りかかるのを待ちます。  やがて、出家姿になった鈍太郎が、鉦鼓を叩き、念仏を唱えながらやって来ると、女たちは代わる代わる声をかけ、昨夜乱暴に扱ったことを詫びますが、鈍太郎は少しもとりあってくれません。そこで、女たちは二人同時に押し止め、衣の袖や袂に取りついて修業の邪魔をしようとします。たまりかねた鈍太郎は、今後本妻と愛人がともに仲良く自分を 大切に扱うのを条件に、出家を思い留まることにします。そして、一月のうち上十五日は上京ヘ、下十五日は下京へ行くことを約束します。 鈍太郎は、二人の女の手車に乗って「これは誰れが手車、これは誰れが手車」と声をかけ、女たちには「鈍太郎殿の手車、鈍太郎殿の手車」と囃させながら、得意げに婦って行きます。

 みどころ

  鈍太郎は、最初は世をはかなんで出家するものの、後に二人の女に懇願されて思い留まり、最後は手車に乗って浮かれながら退場するというふうに、無邪気で明るい性格の人物として描かれています。また、二人の女たちについても、下京の女は鈍太郎と幼なじみの古女房、上京の女は器量良しの気立て良しという設定になっており、鈍太郎が後者には優 しく、前者には少々意地悪に振舞うところが笑いを誘います。

参考文献
『岩波講座 能・狂言Z 狂言鑑賞案内」(岩波書店)
『狂言ハンドブック』(三省堂)

平成十三年京都大学能と狂言の会パンフレット 文:谷尻和宣

 

 公演情報

 


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