因幡堂(いなばどう)


「またご夢想のお妻も、酒を好くと見えた。
とかく某には、酒を飲む女が添うとみえた」
今度の奥さんも“ザル”のよう。
 

分  類:聟女狂言 夫婦物

登場人物:男(夫、シテ)、女(妻)


 あらすじ

 大酒飲みの妻に愛想をつかした男が、妻が実家に帰ったのを幸いに離縁状を届けさせた上で、因幡堂の薬師如来に妻乞い(つまごい)をする。
 妻が腹を立てて出て、因幡堂へ行き、通夜をする夫を見つけ、「西門の一の階(きざはし)に立ったのを妻と定めよ」という告げをして、被き(かずき)姿で立つ。
 夫はご夢想の妻と信じて連れ帰り、盃事をするが、この女も大酒飲みで、盃を離さない。被きを取ったところ、それはもとの妻であった。


 「ヤイヤイ、ヤーイわ男!」「エィ、女ども、おりゃったか」
腰が抜けて、立てまへ〜ん。
 

 みどころ

 男のあわれさ、かなしさに同情するより、やっぱり笑ってしまう狂言。「わわしい女」という言葉に代表される、狂言の女性像そのままの、たくましいかみさん(しかも大酒飲み)も出てきて、随分と楽しめます。この演目名でもある「五条の因幡堂」は、日本三如来の一つに数えられる薬師如来が本尊で、広く庶民の信仰を集めてまして、狂言『仏師』『六地蔵』『鬼瓦』にも登場する、狂言にとって馴染みの場所になっております。

文:湯田拓也

 公演情報


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