
分 類:小名狂言 太郎冠者物
登場人物:太郎冠者(シテ)、主、仲裁人
あらすじ
主に鎌倉に行って“金の値”を聞いてこいと言いつけられた太郎冠者は、“鐘の音”と聞き間違え、寺々を回って鐘の音を聞いて帰り、それぞれの鐘の音の特徴を報告し、建長寺のがよいとすすめる。主に怒られた太郎冠者は、寺々で鐘の音を聞いたことを謡につくって舞い、ご機嫌を直そうとするが、叱られて終わる。

みどころ
この狂言は、太郎冠者の独り舞台といっていいでしょう。主人の息子の刀の差し初めに、
鐘の音が何の役に立つのか、と思ったまでは良かったのですが、確認を怠ったために、
大変な目にあってしまいます。わざわざ鎌倉まで行って、寺々を回って鐘の音を聞いたのに、怒られてしまうんですから。
この鐘の音を聞いてくる所がこの曲のみどころといってよいでしょう。4個所の鐘の音を
みなさんも聞き比べて下さい。ずいぶんと違います。
狂言はなんでも台詞で説明してしまいますが、鐘の音などの擬音も台詞で表します。
能「三井寺」でもアイが鐘を撞きますが、やっぱり台詞で鐘の音を表します。
夕暮れの遠山に鐘の音が響く光景が目に浮かべば、良い舞台ですが、そのためには
みなさんの想像力を大いに働かせなければなりません。
「あそこに鐘がある」と言われたら、たちどころに鐘を想像して下さい。
演者の技量もさる事ながら、みなさんの想像力が舞台の善し悪しを左右します。
鐘の音を聞いてまわってきた太郎冠者を待ち受けているのは、主人の叱責でした。 言い訳に寺々で鐘の音を聞いたことを謡にして舞いますが、やっぱり怒られてしまいます。 骨折り損のくたびれ儲けですね。演者にとってもこの舞は大変です。 長々と独り舞台を進めてきた上に、謡いながら舞うのは疲労の追い討ちです。 この世界を体験しようと思ったら、10分間ランニングした後、3分ほど 大声で歌いながらランニングして下さい。そのしんどさが良くわかります。
舞の最後は、大蔵流では「主殿に素首を取って突き鐘の」 となっていますが、和泉流では「主殿の素首を取って突き鐘の」 となっています。主人の首を取ってしまったら、そりゃ怒られますね。
文:佐渡のきつね
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