餅酒(もちざけ)


「お奏者ならば敗亡(はいもう)致いた。真平御免あれ。」
叱られてしまいました。

分  類:脇狂言 百姓物

登場人物:越前の百姓(シテ)、加賀の百姓、奏者


 あらすじ

 越前の国と加賀の国の百姓が、お正月のお祝いの年貢として、 それぞれ円鏡(餅)と菊酒を都に持って上る。
 都の館に着くと、上頭がちょうど歌合わせをしている時に来た ということで、二人の百姓はそれぞれの年貢にちなんだ歌を一首 ずつ詠むよう命じられる。
 なんとか二人が歌を詠むと、上頭に百姓に似合わぬ立派な歌だと ほめられ、褒美に万雑公事を免除されることになるが、 二人は喜びの余り、大声を上げてしまう。
 機嫌を損ねた上頭は、今度は年貢にちなんだ大きな歌を詠むよう命じる。 これもなんとか詠むと、上頭は感心し、二人に酒を飲ませ、めでたく洛中を 舞いながら国へ帰るよう言う。
 上頭に別れを告げた二人は、和歌を詠み、三段ノ舞を舞い、 最後に餅と酒を讃えた舞を舞って帰っていく。


「やいやいやい、そこな奴」
嬉しくて騒いでしまったので、やっぱり叱られてしまいました

 みどころ

 二人の百姓が苦心して歌を詠むところが見所です。 始めは加賀の百姓が詠んだ歌は、
  飲み伏せる 酔いの紛れに年一つ   打ち越し酒の 二年酔いかな
なかなかの歌です。 しかし、越前の方は歌を詠むということが余り分かっていない様子。 加賀の詠んだ歌をそのまま詠んでしまいます。 自分の年貢になぞらえて詠めと言われ、考えた越前、
  年の内に 餅は搗きけり 一年を   去年(こぞ)とや食わん 今年とや食わん
おそらく初めて詠んだであろう歌にしては上手いものです。
さて、しかられた後、今度は大きな歌を詠めと言われます。 加賀は、
  盃は 空と土との間(あい)の物   富士を不空(づきす)の方にこそ飲め
なかなかスケールの大きな歌です。富士山を盃にたとえました。 そして越前は、
  大空に 憚るほどの餅もがな  生けろう一期 かぶり食らわん
大胆ですね。越前の百姓は豪放磊落な性格のようです。

そして、この曲最大の見所はなんといっても最後の三段ノ舞でしょう。 特に、餅酒ではこの舞を、二人一緒に舞う(相舞と言います)ので、 二人が如何に上手く合わせられるかというところがポイントになります。 その後、餅酒の舞を力強く謡いながら舞い、めでたい雰囲気の留めと なります。


仲良く舞を舞って帰ります。

文:どどすけ

 

 公演情報


「狂言演目紹介」冒頭ページに戻る

トップページに戻る