筑紫奥(つくしのおく)


「両国のお百姓、御前に」

 

分  類:脇狂言 百姓物

登場人物:丹波の百姓(シテ)、奥筑紫の百姓、奏者


 あらすじ

 奥筑紫の百姓が唐物(からもの:中国より渡来した物)を、丹波の百姓が柑類(果物)を、それぞれ年貢として上洛する途中、二人は道連れになり、一緒に領主の館へ行く。
 年貢の品々を拍子にかかって申し上げ、おほめにあずかって万雑公事(まんぞうくじ:諸税・諸賦役)を免除される。喜びのあまり大声を立てたので機嫌をそこねるが、耕作する田一段について一笑いずつ笑うことによって許される。立ち戻った二人は奏者を交えて三人で笑って留める。

 みどころ

 奥筑紫の百姓の納めた物は唐物(からもの)。「金襴・緞子(どんす)・鈍金(どんきん)、唐絵の香箱・沈香(ちんこう)、豹の皮に虎の皮」 中国からの豪華な輸入品。一方の丹波の百姓の納めた物は柑類。「柚香・柑子・橘、有りの実・柘榴(ざくろ)・玄(けん)の実、栗の枝折り、野老(ところ)」 柑橘類です。奥筑紫の百姓には見劣りしてしまうので、自分の年貢を相手に見られないように色々画策します。

 私が好きなのは奥筑紫の百姓が申し上げた後のやり取り
丹「今の内に落ちたものがある」
筑「何が落ちた」
丹「山椒の皮が落ちた」
筑「あれは辛い物でこそあれ。唐物では折り無い」
真面目にこう言われると、くすっと笑ってしまいます。

 この狂言最大の笑わせどころは「一段で一笑」。筑紫の百姓は田畑を二段作っているので二回笑います。丹波の百姓は一段と段半(きたなか)。0.5段分を見事に表現します。奏者でなくとも「後のは何?」と思ってしまうでしょう。私は素で「後のは何じゃ」と聞いてしまいました。

 小ネタはいろいろあるのですが、百姓物は祝言性の強い狂言なので、年貢を納めて奏者とやり取りをしてめでたく終わるということが見どころと言えます。

文:藤野正也

 

 公演情報

 


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